最近LGBTという言葉を耳にする回数が増えてきたのではないでしょうか。
LGBTとは何か、LGBTはどのような経緯で認識が広まっているのか、LGBTは日本ではどのように扱われているのかについて解説していきます。
LGBTについてまだよくわかっていないという方、少し詳しく知りたいという方はぜひご確認ください。
目次
LGBTとは何か?簡単な歴史と共に解説
LGBTとは、レズビアン(Lesbian)、ゲイ(Gay)、バイセクシュアル(Bisexual)、トランスジェンダー(Transgender)の頭文字をとった言葉で、これらの性的指向や性自認を持つ人々を指します。LGBTは、性的マイノリティやジェンダーマイノリティと呼ばれることもあります。ここでは、それぞれの意味や歴史、社会的な状況について詳しく説明します。
レズビアン(Lesbian)
レズビアンとは、女性同性愛者のことを指します。つまり、女性が女性に対して恋愛感情や性的感情を抱くことを意味します。レズビアンのコミュニティは歴史的に男性中心の社会で見過ごされがちでしたが、20世紀後半から権利の獲得と認知が進んできました。
ゲイ(Gay)
ゲイは、男性同性愛者のことを指します。つまり、男性が男性に対して恋愛感情や性的感情を抱くことを意味します。ゲイの歴史は古くから存在し、古代ギリシャやローマなどでも同性愛は一定の認知がありました。しかし、多くの時代と文化で迫害されることも多く、現代においてもその権利獲得のための闘争が続いています。
バイセクシュアル(Bisexual)
バイセクシュアルとは、異性と同性の両方に対して恋愛感情や性的感情を抱く人々を指します。バイセクシュアルの存在は時に見過ごされがちで、「本当に存在するのか」と疑問視されることもあります。しかし、バイセクシュアルは確立された性的指向であり、多くの人々がその中に含まれます。
トランスジェンダー(Transgender)
トランスジェンダーは、生まれ持った性別と自認する性別が一致しない人々を指します。トランスジェンダーの人々は、性別適合手術やホルモン治療などを通じて、自分の性自認に一致する身体を手に入れることを選ぶこともありますが、全てのトランスジェンダーがこれらの医療介入を望むわけではありません。
【古代〜現代】LGBTの歴史
古代から中世まで
古代の多くの文化では、同性愛は特別な禁止対象ではありませんでした。例えば、古代ギリシャでは同性愛は社会的に認知されており、特に男性同士の愛が理想化されることもありました。古代ローマでも同性愛は比較的寛容に受け入れられていました。
しかし、中世に入ると、キリスト教の影響が強まり、同性愛は罪と見なされるようになりました。特にヨーロッパでは、同性愛者は厳しい迫害を受け、多くの人々が処罰や社会的排斥に苦しみました。
19世紀から20世紀初頭
19世紀になると、ドイツの法律家カール・ハインリッヒ・ウルリクスが「ウルニング」という言葉を提唱し、同性愛者の権利を訴える活動を行いました。また、1897年にはドイツで最初の同性愛者権利団体である「科学・人道委員会」が設立されました。
参考:補論3)近代市民社会における男性同性愛者排除の論理(三成美保)
20世紀中頃
第二次世界大戦後、特に1960年代から1970年代にかけて、LGBTの権利運動が活発化しました。1969年、アメリカのニューヨーク市で起こったストーンウォール事件は、権利運動の象徴的な出来事とされています。ストーンウォール・インというゲイバーに対する警察の襲撃に抗議して、LGBTの人々が立ち上がったこの事件は、現代のLGBT権利運動の出発点とされています。
20世紀後半から21世紀初頭
1980年代から1990年代にかけて、エイズ危機がLGBTコミュニティに大きな影響を与えました。この時期、多くのLGBTの人々がエイズによって命を落としましたが、同時にエイズ対策のための活動が活発化し、LGBTの権利運動が一層強化されました。
1990年代以降、多くの国でLGBTの権利が法的に認められるようになりました。例えば、オランダは2001年に世界で初めて同性婚を合法化しました。以降、ヨーロッパやアメリカ、カナダなど多くの国々で同性婚が合法化され、LGBTの人々の権利が拡大していきました。
現代のLGBTの状況
21世紀に入り、LGBTの権利はさらに進展を見せています。同性婚の合法化やトランスジェンダーの権利の認知が進む一方で、まだ多くの地域ではLGBTの人々が差別や迫害に直面しています。
国際的な機関や非政府組織も、LGBTの権利を保護するための活動を展開しており、特に国連はLGBTの人権を積極的に擁護する立場を示しています。
日本社会におけるLGBTの状況
社会的認識と受容
日本では、近年LGBTに対する認識が徐々に向上してきました。メディアや教育機関でLGBTに関する話題が取り上げられることが増え、企業や自治体によるLGBTフレンドリーな取り組みも進んでいます。
しかし、依然としてLGBTの人々に対する偏見や差別が存在し、特に職場や家庭でのカミングアウトが難しいと感じる人が多いのが現状です。
現在は減ってきていますが、LGBTであることをカミングアウトしたことで関係が疎遠になってしまったり、職場を追われてしまうケースがありました。適切にLGBTを理解し、受容していくことが重要です。
同性婚とパートナーシップ制度
日本では、同性婚は現在合法化されていません。しかし、一部の自治体では「パートナーシップ証明書」制度が導入され、同性カップルに対する法的な認知が進んでいます。
パートナーシップ制度は、同性カップルが病院での面会や住居の賃貸契約などにおいて、ある程度の法的保護を受けられるようにする制度です。また、この制度によって多様な性について正しい理解と認識をしてもらうという効果も期待されます。
職場におけるLGBTの権利
一部の企業では、LGBTに対する差別を禁止し、ダイバーシティ推進の取り組みを行っています。例えば、トヨタ自動車やソニーなどの大企業は、LGBTフレンドリーな職場環境の整備に力を入れています。また、毎年開催される「東京レインボープライド」などのイベントが、LGBTコミュニティの可視化と社会的認知の向上に貢献しています。
参考:企業のLGBTに対する取り組みを知る指標【LGBT就活・転職ガイド8-11】
法案と法的状況
パートナーシップ制度
日本では、同性婚を認める法律はまだありませんが、先ほどご紹介したパートナーシップ証明書制度が自治体レベルでも導入されています。
- 渋谷区と世田谷区:2015年に日本で初めてパートナーシップ証明書を発行しました。
- 札幌市、福岡市、大阪市など:他の多くの自治体でも同様の制度が導入されています。
先ほどもご紹介したようにパートナーシップ証明書は法的拘束力は持ちません。しかし、病院での家族としての面会権や住居の賃貸契約など、日常生活における一定の法的保護を提供する役割を果たしています。
性同一性障害特例法
2004年に施行された「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」は、性同一性障害者が性別変更を法的に認められる制度を提供しています。
この法律により、一定の条件を満たせば戸籍上の性別を変更することができますが、条件には結婚していないことや未成年の子供がいないこと、性別適合手術を受けることなどが含まれており、これらの要件が厳しいと批判されています。
差別禁止法
日本にはLGBTに対する包括的な差別禁止法は存在しませんが、いくつかの自治体では独自に差別を禁止する条例を制定しています。例えば、東京都の「東京都人権施策推進条例」では、性的指向や性自認に基づく差別を禁止しています。
教育と啓発活動
学校教育における取り組み
学校教育の現場でも、LGBTに対する理解を深めるための取り組みが始まっています。
文部科学省は、性的マイノリティに関するガイドラインを作成し、学校でのいじめや差別を防止するための指導を行っています。多くの学校で、LGBTに関する授業やカウンセリングの充実が図られていますが、まだ一部の地域や学校にとどまっているのが現状です。
啓発活動とメディアの役割
LGBTに対する啓発活動も、さまざまな団体やメディアによって行われています。例えば、東京レインボープライドや大阪レインボーフェスタといった大規模なイベントが毎年開催され、多くの人々が参加し、LGBTの理解を深める機会を提供しています。また、テレビや映画、インターネットなどのメディアも、LGBTに関するポジティブなメッセージを発信し、社会全体の認識を変える重要な役割を果たしています。
課題と今後の展望
- 法的保護の強化:同性婚の合法化やLGBTに対する差別禁止法の制定など、法的保護の強化が求められています。
- 教育と啓発:学校教育や職場研修を通じて、LGBTに対する理解と受容を深める取り組みが重要です。
- 社会的支援の拡充:LGBTの人々が安心して生活できるよう、相談窓口の設置や支援団体の活動支援が必要です。
まとめ
LGBTとは、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーの略であり、これらの性的指向や性自認を持つ人々を指します。彼らの権利と認知のための運動は世界中で続いており、多くの進展が見られる一方で、まだ多くの課題が残されています。理解と受容を深め、より包括的で平等な社会を目指すために、私たち一人ひとりの意識と行動が求められています。
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